損害保険の解約、解除、取消し、失効、無効、キャンセルはどうちがう?

損害保険を契約しても何らかの理由で契約が有効でなくなることもあります。

保険の対象物件が譲渡などによりなくなったなど、保険が不要になったので、契約者から解約を申し出る場合や、何らかの理由で保険会社から契約を解除する場合などがあります。

損害保険契約が有効でなくなる場合として、解約、解除、取消し、失効、無効、キャンセル(クーリングオフ)がありますが、それぞれどうちがうのか整理してみましょう。

 

損害保険の解約

保険契約者からの申し出により保険契約を解約することです。

契約者はいつでも保険契約を解約することができて、未経過期間分については保険会社の定める計算方法により保険料の返還があります。

保険法 第27条には、保険契約者は、いつでも損害保険契約を解除することができる。とありますが、契約者から契約をやめたいという申し出がある場合、解除ではなく「解約」という言葉を使うことが一般的です。保険契約の変更手続きに使用する書面にも「解約」と記載されることがほとんどです。

 

損害保険の解除

契約者が期限までに保険料を払わない、または契約者の通知義務違反があった場合に、保険会社は保険契約を解除することができます

通知義務違反というのは、損害保険契約締結後にその保険がカバーすべきリスクが増した(危険の増加)結果、保険料に不足が生じる状態になることを意味しています。

たとえばですが、単なる倉庫として契約していた建物が途中から危険物を扱うような製造用途に変わった場合など、危険が増加しているといえます。

通知義務違反にならないようにするためにも、その保険契約が対象とする物件や業務の条件などをきちんと理解しておくことが大切です。

損害保険契約の解除は、将来に向かってのみその効力が生じて契約が終了し、解除前に遡及して契約が終了することはありません。

もし、すでに何らかの事故があって保険金を受取っている場合は、保険会社はその保険金を返還するよう請求することができます。ただし、通知義務違反にあたる事実と保険事故による損害(または傷害疾病)との間に因果関係が認められない場合は、その限りではない、ということです。

損害保険契約が解除された場合、未経過期間分については保険会社が定める計算方法で算出された保険料が返還されます。

なお、保険会社が契約解除の原因があることを知ったときから1か月、または危険増加時から5年を経過すると、保険会社は契約を解除することができません。

 

クーリングオフ(キャンセル)

損害保険の場合は、保険期間が1年を超える契約または新規の個人契約の場合に、クーリングオフ(契約のキャンセル)をすることができます。クーリングオフを行う場合には、契約の申込をした日、またはクーリング・オフの説明書を受け取った日のいずれか遅い日から起算して8日以内に、保険会社宛にクーリングオフの旨を記載した書面を郵送します。

 

ただし、以下の場合はクーリングオフができません。
1. 営業または事業のための契約
2. 法人または社団・財団などが締結した契約
3. 自賠責保険などの強制保険
4. 申込者が、あらかじめ訪問日を通知し、契約目的の訪問である旨を明らかにし、保険会社・代理店などの営業所等で申込まれた契約
5. 預貯金口座への振込みによる方法で保険料を払い込んだ契約(ただし、保険会社・代理店などに振込みを依頼された場合にはクーリング・オフができます。)。
6.質権が設定された契約
7. 更改契約(継続契約) など

これらを踏まえると損害保険でクーリングオフができる条件というのは、個人宅への飛び込み営業で新規に1年を超える契約をして現金払いで保険料を払った場合、などが該当しますが、だいぶレアケースでしょうね。

 

損害保険契約の取消し

損害保険契約は、次のような場合に取消すことができます。
未成年者が、法定代理人の同意を得ないまま契約を締結したと
保険会社が、契約者等の詐欺または強迫によって契約を締結したと

ここでの「取消し」の意味とは違うと思いますが、損害保険契約を取消す、ということが稀に起こります。

たとえば、自動車保険の更新を行ったあとで、保険始期が到来する前に自動車の入替が生じた場合など、「始期前取消し」として更新契約を取消し処理することがあります。同時に正しい自動車情報に基づいて契約をし直す、ということがときどきあります。

 

損害保険契約の無効

契約者が保険金を不法に得る目的だったり、第三者に保険金を不法に取得させる目的をもって損害保険契約を締結したときは、保険会社はその契約を無効として処理することができます

既に起きている損害について、あたかも無事故のように申告して保険契約を行い、保険契約締結後に事故が起きたと虚偽の保険金請求を行う場合などが該当するでしょう。

無効として処理された場合は、モラルリスクの観点から基本的に保険料の返還はありません

保険金の不正請求は未遂であったとしても犯罪行為ですから逮捕される場合もあります。

 

損害保険契約の失効

保険事故以外の事故によって保険の対象になる物や人が滅失したり死亡したりした場合などについては、契約の当事者の意思表示がなくても、原則として契約は失効します。

物件の譲渡があった場合など、保険会社によっても異なりますが、「失効」として手続きする場合と「解約」として手続きする場合があります。いずれにしても未経過分の保険料は、保険会社が定める計算方法によって算出された保険料が返還されます。

 

重大事由による契約解除

故意に事故を起こすなど、契約者側に保険会社との信頼関係を破壊するような行為(重大事由)があった場合には、保険会社が契約を解除することができます(重大事由解除)。

・契約者等が、保険金を支払わせることを目的として損害を生じさせ、または生じさせようとした場合。
・被保険者または保険金を受け取るべき者が、保険金の請求について、詐欺を行い、または行おうとした場合。
・契約者等が保険会社の信頼を損ない、契約の存続を困難とする事由を生じさせた場合。
・他の保険契約等との重複によって、被保険者に係る保険金額等の合計額が著しく高額となり、保険制度の目的に反する状態がもたらされるおそれがある場合。

保険契約者の中には不正請求をする人も一定割合いて、保険会社は不正請求者のブラックリストのようなものを作成しているようです。

なお、重大事由解除の場合でも基本的には未経過期間に応じた保険料の返還があります。

ただし、通常の解除と違って、重大事由と保険事故による損害(または傷害疾病)との間の因果関係が認められない場合に保険会社が保険金を支払う旨の規定や、保険会社の契約解除権の行使期間を制限する旨の規定は設けられていません。

 

まとめ

「解約」・・契約者から申し出て解約すること。
「解除」・・保険料不払い、通知義務違反により保険会社が解除すること。
「クーリングオフ」・・8日以内ならクーリングオフできる場合もある。
「取消し」・・未成年の勝手な契約や、強迫行為等による契約について保険会社は取消しができる。
「無効」・・不正請求する目的で締結された契約は無効とすることができる。保険料は返還されない。
「失効」・・対象物件(or人)がなくなった場合は失効となる。「解約」の意味に近い。
「重大事由解除」・・不正請求をしようとした場合は重大事由解除となる。

 


(注)記載のある各保険については一般的な内容の説明です。個別具体的な保険契約内容についてはパンフレットや重要事項説明書、約款等をご確認いただくか、保険代理店または保険会社へお問い合わせください。


 


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