たとえば「資産運用ができれば保険は少なくていい」という話-ファイナンシャルプラン関連しあう6分野

個人のライフプランを考えるとき、ファイナンシャルプランニングでは主に以下「6つの分野」を扱います。

そして各分野は独立して考えるものではなく少なからず他の分野と関連しあうものです。

  • ライフプランニング・リタイアメントプランニング
  • 金融資産運用設計(NISA,iDeCo等)
  • リスクと保険
  • 不動産運用設計(住宅購入など)
  • タックスプランニング
  • 相続・事業承継
目次

1.ライフプランニング・リタイアメントプランニング

「ライフプランニング・リタイアメントプランニング」ではまず、現状の収支を確認し、住宅、教育資金、老後などのライフイベントについて総合的にシミュレーションを行います。

大きな病気やケガ等がない前提で考える「メインシナリオ」をつくり、将来の収支が厳しい場合には優先順位を確認し、収入を上げるか、何か支出を減らす検討を行います。

ポイントは、「将来のどの時点でも普通預金等がマイナスにならないこと」です

2.金融資産運用設計(NISA,iDeCo等)

「金融資産運用設計」では、個人のリスク許容度と資産運用の目的に応じて、たとえばローリスクローリターンやミドルリスク・ミドルリターンなどの基本戦略を立て、そのためにはどのような資産に投資すべきか、または月々いくらずつ積立てるか、何歳までにいくらまで増やすかなどを検討します。

資産運用を行っていると、たとえば「日本株は調子いいけど、海外資産は調子悪い」ということが起きたり、当初の保有資産割合が変わってくるものです。

長期投資によるタイミングのリスク分散と、国内や海外、株や債券など資産の分散効果により、リスクを低減し、長期的な資産形成を目指します。

3.リスクと保険

「リスクと保険」では、家族の死亡、大きな病気・ケガ、就業不能などのリスクに備えるための検討を行います。

最悪の想定としてたとえば、世帯主が今亡くなってしまった場合に、家計がどのように変化するのか、今加入している保険で十分なのか、または保険に加入しすぎではないのかリスクシナリオを作成し検討します。

また、死亡時のみならず「就業不能時」のシミュレーションも作成すると、生活費は変わらないがあまり保険金は受け取れず、生涯収支が厳しいということが分かったりします。

必要に応じて配偶者の収入を上げる、支出を減らす、保険を見直すなどの対策を検討します。

4.不動産運用設計(住宅購入など)

「不動産(住宅)」の分野では、人生で一番大きな買い物と言われる住宅についての購入計画や賃貸プラン(借りる、貸す両方)、修繕・維持費用などの最適なプランを検討します。

いま買うべきかどうか、またはいくらまでの住宅購入なら無理がないかなどライフプランニングから最適と思われる選択を考えていきます。

住宅ローンが始まれば、後戻りできません。無理のないローン額を生涯収支の観点から把握することが重要です。

5.タックスプランニング

「税金」の分野では、いま自分に関係している、または将来関係するかもしれない税金について考えます。

一般的な会社員世帯の場合、大きな節税などの対策はとりづらいですが、徴収される税の仕組みを知ることで、場合によっては税額を抑えられるケースもあります。

とりわけ大きなお金が動く住宅の売買や、相続では選択によって税額が大きく変わることがあるので戦略が必要です

また、保険に加入することでの保険料控除や、金融資産運用で差益が出た場合の税額を知っておくことも有用でしょう。

誰もができる節税の手段としてはiDeCoやNISA、ふるさと納税を賢く活用するとよいですね。

6.相続・事業承継

「相続」の分野では、①円満な相続、②相続税対策の2つを検討する必要があります。

相続を受ける立場の場合、積極的に相続対策に関与しづらい心情的な配慮も必要になりますが、相続対策の基本と選択肢を知ることで、無駄に争ったり、無駄な相続税を払わなくて済むケースがあります。

少なくとも、どれだけの相続資産があるのか、それを円滑に分けることができるか、相続税はどれだけかかりそうかのざっくりとした計算だけはしておくとよいでしょう。

関連しあう6分野

FPが取扱う上記6つの分野は、それぞれ独立して考えるよりも以下のように関連付けて考える方が、効率的な経済思考を醸成できます。

たとえば、まず「住宅購入」を考えるとすれば、住宅取得時点からその維持まであらゆる”税金“が関係しますし、どこにいくらの住宅を買うかで大筋の”ライフプラン“が決まってきます。住宅ローンを組めば団体信用生命保険に加入することで”保険“を見直すきっかけにもなりますし、最終的にその住宅を誰に”相続“させるかまで考えることもあるでしょう。

「金融資産運用」を実行する場合、まずはその差益に”税金“がかかります(NISAやiDeCoはかかりませんが)。”住宅ローン“があれば、手元にある〇〇〇万円を繰上げ返済するのか、”資産運用“に充てるか、”教育資金“にとっておくかなど検討する必要も出てきます。

「保険」に加入する場合、本来ならば個別の”ライフプラン“をつくり、遺族が生涯にわたってどれだけ金融資産が不足するのか把握してから保険に入ることを検討することで、納得感があり、過不足ない保険加入ができます。また、保険料控除として”税金“も関係してきます。

また、万一の場合の保険金を資産運用するのかどうかでも、どれだけの保険金が必要か大きく変わってきます。たとえば、3000万円の保険をほぼ0%金利の普通預金に預けるのか、または年平均リターン3%で運用できるかでは大きな違いが生じます(3000万円×3%=年間90万円を生み出す)。その分保険料を節約できれば家計が助かりますね。

「相続」を考える場合も「相続」単体ではなく、ライフプランをつくって、資産がどのように推移するのか、万一の場合の保険はどれだけ受け取れるのか、税金はどうなるか、住宅があればそれをどうするのか、様々考える必要があります。

各分野の専門家とFPの役割

税理士や不動産業者、保険会社、証券会社などそれぞれに専門分野がありますが、それぞれを包括してアドバイスできるのがFPの強み(存在意義)と言えるでしょう。

扱う6分野について、それぞれ個別に関連する事柄を明らかにし、個別世帯ごとに大事にしたい優先順位を踏まえたうえで、最適な道筋を描くサポートをしていくのがFPです。

そして、必要に応じて信頼できる税理士や、弁護士、不動産業者、保険会社などを紹介するというパイプ役の機能を発揮し、最適なマネープラン実現のために機能するというのがあるべき姿。

しかしながら現在のFP業の課題として、そういう理想的なFPサービスを提供できるFPがそもそもどれだけいるのだろう、という感じがしているのと、優秀なFPを見つけたとしても、相談料に数万円などという費用が掛かるのが一般人にとって相談ハードルを上げています。

これでは庶民は気軽に相談しにくいので、FPの分野においてもオンラインサービス(クラウドサービス)のような形で安価にもっと普及していけば良い世界になると思われます。

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