20年後(2040年代以降)公的年金は今より2割程目減りする?
いま年齢が30代、40代の場合、公的年金を受け取るのは2040年代以降になるが、年金受取額が縮小されていくことは把握しているだろうか。
3パターン程のシミュレーションがあるが、2019年の財政再検証のうち、物価上昇率が0.8%程度の場合、以下のように想定されている。(他の2パターンは物価上昇率が1.2%、2.0%となっていたので、現実的には以下のパターンが有力かと推察)
現在、所得代替率はやく60%ほどだが、2040年代には51%程に減額されていく見通し。
所得代替率とは、現役時代の平均手取り額の何%くらいを年金でもらえるかという割合のこと。
それが、60%→51%になるとすれば、「 51÷60=85% 」
約15%程目減りすると予測されている。
将来の収入については保守的に考えていた方がいいと思うので、個人的には現行制度よりも約2割程減額されると思っていた方がいいと考えている。
さらに、今後20~30年の間にも物価が上昇していくだろうから、日本人の老後の生活はますます厳しくなることが予測される。
今のうちからしっかり資産形成しておくとか、夫婦共働きで年金受取額を上げるとか、一部に自給自足を考えるとか何か戦略的な思考が必要になる。
高齢者を現役世代が支える割合の推移
少子高齢化によって65歳以上の世代を現役世代が支える割合はどんどん厳しくなっている。
・1950年 約12人で1人の高齢者を支える
・1980年 約7人で1人の高齢者を支える
・2000年 約4人で1人の高齢者を支える
・2010年 約3人で1人の高齢者を支える
・2020年~2030年代 約2人で1人の高齢者を支える
・2040年代 約1.5人で1人の高齢者を支える
R4年内閣府『高齢社会白書』より
公的年金の仕組み設計当初は、ここまで現役世代が支える割合が厳しくなることは予測されていなかったのだろう。今の年金制度を維持していくためにGPIFなどで運用の仕方を変更し、運用利回りを高めたりしているが、それでも独身世帯とか、専業主婦(主夫)世帯、自営業などの世帯は老後資金をよりしっかり考えておく必要があると思う。
公的年金はいくらぐらいもらえるのか?
いま30代・40代以下の場合、将来の公的年金は、いくらぐらいもらえるのか?
そして、それが十分なのか不十分なのか一度考えておく必要がある。
もし不十分ならどれだけ不足なのか、不足分を埋めるにはどれだけ準備すればいいのか、具体的に考えてみる。
生命保険文化センター『令和元年度「生活保障に関する調査」』によれば、老後生活に不安感ありは約85%。不安に感じる理由は、ほとんど経済的な事柄によるもの。
「公的年金だけでは不十分」
「自助努力による準備が不足する」
「退職金や企業年金だけでは不十分」
「仕事が確保できない」
「配偶者に先立たれ経済的に苦しくなる」
「貯金等の準備資金が目減りする」
「住居が確保できない」
etc…
それに対し、十分かどうかは別として、何らかの手段で自分で準備している人の割合は約62%、まったく準備していない人は35%以上。
「人は重要でも緊急性のないものは後回しにしてしまう」性質がある。
病気や離婚など事情があって老後のための貯蓄ができないとか、目の前の生活でいっぱいいっぱいという方もいるだろうが、「単に後回しにしているだけ」という人も多いかもしれない。
まず、日本人全員が加入する(ことになっている)国民(基礎)年金は20才~60才まで年金保険料を払い、基本的に65才から満額で年間約78万円死ぬまで受取れる(現状の額)。
会社員や公務員などの厚生年金はその人の総報酬額に応じてだいたい年70万円~170万円程が受取れる(現状では)。
つまり、会社員等は総報酬額に応じ、基礎年金とあわせ年150万円~250万円受取ることができて、妻が専業主婦の場合、妻の基礎年金約80万円を足して、満額計算なら年230万円~330万円もらえることになる。
ちなみに、現在年金を受け取っている人の平均受給額は、厚生年金+基礎年金の人は年約175万円、基礎年金だけの人は年約67万円。会社員と専業主婦の組み合わせの場合、平均で240万円。
厚生労働省年金局「平成30年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
厚生年金は総報酬額に応じて・・・と書いたが、ざっくり計算するなら以下のような簡易計算の考え方がある。
手取りの総報酬額×0.55%=厚生年金部分(報酬比例部分)の年間受給額
例:
社会人1年目手取り300万円~60才定年時手取り600万円
↓
総報酬額=平均手取り450万円×38年=17,100万円
↓
17,100万円×0.55%=約94万円
この方が会社員で妻が専業主婦の場合、
厚生年金94万円+基礎年金78万円×2=年250万円受取り。
現行の公的年金制度による年金受給額(ざっくり)
※会社員は手取り平均450万円×38年として。
上記の受給額からも、公的年金だけで老後を生活していくのはなかなか厳しいという方が大半かもしれない。
一方、老後の生活費は、60才以上二人以上の無職世帯の平均で年約300万円(月約25万円)。
総務省「家計調査年報」/2018年
(ゆとりを持った生活を望めば、これにプラス年約120万円)
公的年金で不足する分は貯金を取り崩すことになりますが、60才代の貯蓄額中央値は630万円。
金融広報中央委員会 1世帯当たり金融資産保有額(2019年/令和元年)
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まとめると。
・二人以上世帯の老後の平均的な生活費は年300万円
・会社員+専業主婦のモデル世帯の年金収入は年250万円
・60歳代の貯蓄額中央値は630万円
毎年50万円ずつ不足して貯蓄を取り崩したら、10年くらいで底をついてしまう。
しかもこれは現状であって、これから将来老後を迎える30代、40代以下の世代はもっと厳しくなるので十分に備えておく必要がある。
また、公的年金受給額については、「マクロ経済スライド」というよく分からない名前の仕組みのもと、インフレ率ほど公的年金の受給額は増やさないよ、ということになっている。
したがって、必要生活費がインフレにより徐々に上がったとしても公的年金受給額はほぼ上がらないと考えていた方がいい。
いまでも平均的な生活費は年金だけでまかなえないうえに、年金額が減り、さらにインフレによって物価が上がるので、やはり日本人の老後は相当厳しいと認識しておく必要がありそう。
勝ち組世帯の例 | 厳しい世帯の例 |
・夫婦共働きで計画的に貯蓄ができて老後も仲良く健康 ・若いうちから積立投資で十分な資産形成ができた ・もともと資産家 ・現役時代の収入が高い | ・独身世帯 ・どちらかが専業主婦(主夫) ・計画性がなかった |
やはり、一度しっかりした計画を立てて、年金受給額が少なくなっても十分に生活していける見通しを持っておくことが重要だと思う。